いつだってプディングの中にはかたまりがある
2000年02月05日
<要旨>
ジャズは私の青春に重要な重さを占めていたのですが、同じように少年文学も重要な意味を持っていました。しかもそこには、庄司薫が高校生を主人公にした小説で芥川賞をとるといった時代背景もありました。ジャズと少年を取り上げたこの本は、そうした意味でも重要な1冊でした。

若い頃影響を受けた本は何かと考えると、アルベール・カミユの「ペスト」などの典型的大作と並んで、ぜひナット・ヘントフの「ジャズ・カントリー」をあげておきたいと思います。

20歳前後の頃、古本屋でみつけて、その後5〜6回以上は読み返したかもしれません。いま、それから30年近くたって、ぜひまた読んでみたくなって、改訂版をインターネットで注文し、それが届きました。

出版されたのは1964年で、内容はその同時代、すなわち黒人の地位もジャズの地位も依然として低く、公民権運動やベトナム戦争でアメリカが揺れ始めていた時代です。ジャズに心酔している「富裕なWASP」の少年が、黒人ミュージャンたちの「中に」入れてもらおうと渇望しながら、戸惑い「成長」して行くという物語です。

これは、設計準備し尽くされた本ではなく「いわばジャズソロの自発性を持った本」として、また、「かすかにではあるけれども教えようという目的で書き出した」と、その後書きでナット・ヘントフは言っています。そして、作家は、「希望と同様に醜さを、欲求と同様に恐怖を、発見と同様に混乱を」さらし出すべきだと言っています。

私自身、20歳くらいのときにこの本に感銘を受けて、何度も読み返して見ました。しかし、この本の中の(好ましい)登場人物が、私の好きなミュージシャンをひどくけなしたり茶化したりするのに、少し傷ついたり、あるいは自分自身の感性に自信を失いそうになったりしました。しかし、そうした人々の多様なあり方というのが、この本が教えようとしていたことであることも、今は分かります。

「『いつだってプディングの中にはかたまりがある』ところが、あるプディングは別のプディングより味がいい」こうした好きな言葉がいっぱい書かれていることも、私がこの本を好きな理由です。

ジャズ・カントリー

ISBN:4794912463
晶文社 (97.11.30出版)
ナット・ヘントフ〈Hentoff,Nat〉

ぼくはトランペットに夢中。 魂をゆさぶるあの響きがたまらない。 ミュージシャンになりたいんだ!ニューヨークはグリニッチ・ヴィレッジのジャズメンの世界にとびこんだ白人少年の夢と葛藤をいきいきと描き、「最高の青春小説」と絶賛された話題作。

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